Utagawa Hiroshige
Tsuchiyama: Spring Rain, from the series Fifty-three Stations of the Tōkaidō Road ("Tōkaidō Gojūsantsugi Tsuchiyama Haru-no-ame")
c. Tenpō 4-5 (1833-34)/Horizontal Ōban, Nishiki-e/Publisher: Takenouchi Magohachi
梅雨入りの便りも聞かれる季節となりました。今月の一枚は、梅雨に因んで、降雨の情景を描いた作品をご紹介します。
タイトルにあるように、春の雨を描いた作品ですが、保永堂版「東海道五十三次」から、雨の土山宿の情景です。
坂の下宿から鈴鹿峠を目指して険しい山路が続く。鈴鹿の山々は八百八谷といわれ、特に8町(約0.9km)にわたる二十七曲がりの坂道は多津加美坂といい、所々に清水が湧いていた。草色と褐色の合羽を着た一団は、槍持の姿や二つの箱に柄を通した荷物を担ぐ奴の姿が見え、雨の中頭を垂れて悄然と進む大名行列の一行である。激しく降る春の雨を表現するために、垂直線と斜めの線を二度に分けて摺っている。行列の渡る川は、雨によって水嵩が増している。土山を雨の風景で描いたのは、「坂は照る照る 鈴鹿は曇る あいの土山雨が降る」という鈴鹿馬子唄に拠っているのであろう。 (「生誕220年 歌川広重の世界」図録より抜粋)
公益財団法人 平木浮世絵財団菱川師宣から橋口五葉や伊東深水という近代版画に至るまで、近世以降の版画の歴史をたどることが出来るように蒐集されたコレクションです。約6000点の所蔵作品には、重要文化財11点、重要美術品238点を含み、その質の高さは内外に知られています。